ユングラ稽古会シリーズ 2023年6月-7月|YUNGURA Practice Series June-July 2023

ユングラ稽古会シリーズを引き続きおこないます。
それぞれ独自の関心を掘り下げているアーティストを招き、その人が現在関心を持って取り組んでいることを、一緒に稽古する会です。教わるというより、一緒に稽古しにお越しください。
情報は今後追加・変更の可能性があります。

スケジュール

2023年

6月5日(月) 14時〜16時 神村恵「俳句から振付をつくる」①

6月9日(金)  14時~16時 高嶋晋一「探究会:あるをする」①「ある行為がとりかえしがつかないとはどういうことか?」についてのレクチャー練習

6月13日(火) 14時〜16時 神村恵「俳句から振付をつくる」②

6月16日(金)  14時~16時 高嶋晋一「探究会:あるをする」② 「ここにあるとはどういう感じか、そもそもそれは感じられるものなのか?」

7月14日(金)  14時~16時 高嶋晋一「探究会:あるをする」③モノに触れられる(触覚的切り返し)

7月25日(火) 13時〜14時半 豊田ゆり佳「バレエのおかしさを洗い出してみる」① ポジション、アンデオール

7月25日(火) 19時~21時 高嶋晋一「探究会:あるをする」④ 共通感覚について議論する

7月27日(木) 14時~16時 木村玲奈「手仕事から身体を感じてみる -集中と分散-」(参加費に加え、材料費500円がかかります。使用する道具、材料はこちらで用意します。)

7月29日(土) 18時〜19時半 豊田ゆり佳「バレエのおかしさを洗い出してみる」②  プリエ

 

会場:ユングラ(西国分寺駅より徒歩7分)

参加費:500円+ドネーション (7.27は材料費として+500円かかります)

予約不要。直接会場にお越しください。開始20分前よりお入りいただけます。
各回の稽古時間は、少し伸縮する可能性があります。

お問合せ:studio.yungura@gmail.com

主催:プロジェクト・ユングラ

稽古内容

6.9 (金), 6.16 (金), 7.14 (金), 7.25 (火)
高嶋晋一「探究会:あるをする」

私はできれば人間に参加したくない。
できれば人間に参加したくない者が参加したくなる会とはいったい何だろう?
私が真っ向から参加したいのは何だろう。

行きがかり上、あるいは便宜上、私は美術作家を名乗っている。だがどうも私は、何かを作ることや、何かを表現することや、何かを主張することには、さほど関心がないらしい。それより、自他問わず「何かを探っている」という状態に、全面的に関心がある。しかも、その探りたいものが探っている当人であっても十全にわかっていない状態、にもかかわらず、是が非でも探りあてようと、みきわめようとしている状態に関心がある。そして率直に言って、それ以外の人間の状態には、あまり興味がない。私は、私の人生という物語には興味がない。私が真っ向から参加したいのは、ただ誰かによって、何かが探られているという状況だ。

それにしても、何かを探っているとは、いったいどういうふるまいなのだろう。
私ひとりで勝手に探ればいいだけなのに、自他を問わずに関心が出てくるのはなぜだろう。
私は、原理的にひとりきりでしか探ることのできない領域こそ、他人とともに探りたくなる。で、どうなの? と尋ねたくなる。それは他人と話すのが好きというのとは違うし、他人の頭の中を覗いてみたいという願望とも違うと思う。

探ることは、「している」のではなく「しようとしている」ところに、つまり未遂が進行中であるところに独特の上演性がある。たとえば、あなたが現に探っているさまをみることは、あなたが語るあなたの人生の物語をみるのとは異なる上演性をもつ。あなたの肩書きや経歴、その他諸々の、あなたがこれまで与えられ、そうみなされているところの事柄。あるいは、みずからそうみなしていたり、そうみなされたかったりするところのすべての事柄。それらを取り除いて残るものがあなたにあるとしたらそれが何なのか、私は知りたい。探究という圏域において示されるのは、おそらくそうした残りのものであり、あなたと私が脱け殻同士で交感するような事態も、ときに生じるかもしれない。

みずからの行為を回顧するのではなく、ただ現にあることを行為に変換する。
すなわち、「私は今ここにいる」を行為にする。
どうやればいいのかまるでわからないけれど、行き当たりばったりなこの会のとりあえずの目標はそれです。
経験不問です。探究会は、何かを身につける会ではなくて、身を外す会です(武装解除も含む)。みなさまのご参加をお待ちしています。

第一回 (6/9)
「ある行為がとりかえしがつかないとはどういうことか?」についてのレクチャー練習
リディア・デイヴィスの掌編小説「他一名」、吉田戦車のマンガ『伝染るんです。』の四コマ一編、マルセル・デュシャンの《髭を剃ったL.H.O.O.Q.》という計三つの作品を題材としたミニレクチャーの練習をします。とりかえしがつかないことについて人前で語ることそれ自体はとりかえしがつくことだと短絡して、練習に励みたいと思います。大喜利的に即興で口からでまかせを言いたい方にもおすすめです。

第二回 (6/16)
「ここにあるとはどういう感じか、そもそもそれは感じられるものなのか?」
「私はテーブルの上にリンゴをおく/そしてリンゴのなかに入る/なんという静けさ」(アンリ・ミショー)。「リンゴを ひとつ/ここに おくと//リンゴの/この 大きさは/この リンゴだけで/いっぱいだ」(まど・みちお)。二つの詩句に共通して描かれたごく単純な行為、リンゴをおくことが感覚させるものは何でしょう。「そこ」と対置される一般的な「ここ」ではないここ、「あれ」や「それ」と対置される一般的な「この」ではないこの、「そと」と対置される一般的な「なか」ではないなか、を探るすべを探ります。

第三回 (7/14)
モノを見ていると時々モノに見られていると感じることはありませんか? 私はあります。モノを触っていると時々モノに触れられていると感じることはありませんか? 今のところ私にはありません。視覚においてはモノを介して「ここからそこへ」が「そこからここへ」と切り換えされるのに、触覚では距離がゼロのせいか、かえって「そこ」に辿り着けない気がする。すべてが「ここ」に埋没してしまうというわけでもないのにどうしてか。今回は、すぐここにあるモノが私へと切り返してくる可能性を探ります。

第四回 (7/25)
私が他のすべての身体部位を失い、左手だけになって生きているとします。もう相棒の右手はいないので「左」と形容する必要もなくなった、たんに手である今の私が、ある粉を触っています。握りしめると付着し零れ落ちるもするその粉の質感から、かつて目があった頃に見たそれの白さや、かつて舌があった頃に味わったそれの甘さを、私は思い出すことができるのでしょうか。いくつかのフィジカルなタスクを同時に遂行しながら、共通感覚について議論します。

 

6.5(月), 6.13(火)
神村恵「俳句から振付をつくる」
阿部青鞋の俳句から構成される、増田美佳さんのダンススコア「あたたかな顔」の振付を考え、練習します。7月22日に京都で公演をするので、基本的にはそのための自分の稽古です。俳句を動きにしたり、動きを俳句に繋げてみたり、一緒に動いたり考えたりしましょう。スコアは→こちら

 

7.27(木)
木村玲奈「手仕事から身体を感じてみる -集中と分散-」
私のふるさと、青森の刺繍である「こぎん刺し」をつくりながら身体を感じてみる稽古会をします。それぞれひとつ、こぎん刺しの作品を完成させ、作品を色々な形で眺めたり、身につけて動いてみたりする予定です。手芸が好きな方、ユングラに来てみたいなと思っていた方、集中して分散してみたい方、ぜひご参加ください。(材料費+500円かかります。使用する道具、材料はこちらで用意します。)

 

7.25(火),  7.29(木)
豊田ゆり佳「バレエのおかしさを洗い出してみる」
クラシック・バレエの世界ではルールや暗黙の了解などの前提事項がたくさんあります。それは、バレエの世界を常識としない視点からするととてもおかしい基準なのではないでしょうか。レッスンで使用されるパ(動き)を一つの引き金としてバレエを知っている人知らない人に限らず、ディスカッションしてみたいと思います。バレエを俯瞰して見てみましょう。

7/25 ① ポジション、アンデオール 1回目はバレエの前提条件であるポジションとアンデオールに着目してみます。ポジションは1~6番まであり、決まった形をしています。アンデオールは脚全体を回す(開く)ことを言います。 どちらもバレエを始める最初の段階で叩き込まれるため、あまり疑問を持たずに実践する人は多いでしょう。

7/29 ② プリエ 2回目はプリエに着目してみます。プリエというパは膝を曲げて床を踏む、バレエの一番基本的な動作です。膝をただ曲げるのではなく、次の動きにつなげていくための準備の動作でもあります。1回目にやったポジションとアンデオールの観点も踏まえて見ていきます。

アーティストプロフィール

高嶋晋一(Shinichi Takashima)
1978年東京都生まれ。美術作家。ダンサー・振付家の神村恵とのユニット「前後」でパフォーマンス作品を、写真家・映像作家の中川周とのユニット「高嶋晋一+中川周」でヴィデオ作品を制作/発表している。前後名義での近年の上演に《やってみるとはどういうことか》(「Sound Around 002」、ロームシアター京都、2022)、《眺めるを振り付ける》(「Whenever Wherever Festival 2021 Mapping Aroundness――〈らへん〉の地図」、スパイラルホール、東京、2021)など。高嶋晋一+中川周名義での個展に「αMプロジェクト2022「判断の尺度」vol.5 無視できる」(gallery αM、東京、2023)、「経験不問」(Sprout Curation、東京、2022)など。

神村恵(Megumi Kamimura)
振付家・ダンサー。2004年より自身の作品の振付・上演を開始し、国内外で公演を行う。
近年は、自分が環境を作ることと、自分がそれによって動かされることの関係に注目し、作品を発表している。高嶋晋一との「前後」、津田道子との「乳歯」など、美術家とのパフォーマンスユニットも展開し、ダンスに収まらないパフォーマンス作品も制作している。近年の主な作品に、「彼女は30分前にはここにいた。#2」(2020年、国際芸術センター青森)、「新しい稽古」(2023年、BankART KAIKO)、など。2022年、東京都国分寺市にて自身のスタジオ「ユングラ」の運営を開始。2021年度より、セゾンフェローⅡ。

木村玲奈 (Reina Kimura)
振付家・ダンサー。ダンスは誰のために在るのか、ダンスそのもの・ダンス活動・作品・公演の構造を問いながら、創作・作品提示を展開する。また、風土や言葉と身体の関係、人の在り方 / 生き方に興味をもち、国内外様々な土地でリサーチ・創作・上演等を行う。日々の中で、ダンスが生まれる仕組みや構造を探したり、考えることが好き。ユングラの改装をお手伝いしたこともあり、ユングラへの愛はひとしお。主な振付作品に『6steps』『どこかで生まれて、どこかで暮らす。』『接点』がある。’19 – ’20 セゾン・フェローⅠ。’20 – 東京郊外に『糸口』という小さな場・拠点を構え、土地や社会と緩やかに繋がりながら、発表だけにとどまらない実験と交流の場を運営している。 https://reinakimura.com

豊田ゆり佳 (Yurika Toyoda)
1999 年生まれ。4歳よりクラシックバレエを始める。
2008 年よりスターダンサーズバレエスクールに通い、古典的なバレエ作品に加え、フォーサイスやバランシンなどのコンテンポラリー作品にも触れる。2017 年立教大学現代心理学部映像身体学科入学。振付家・ダンサーの砂連尾理に師事。2021 年東京藝術大学美術研究科先端芸術表現専攻入学。2021 年10 月先端芸術表現修士1 年ATLAS 展にて「contact」で四方幸子賞受賞。作家自身はクラシックバレエ出身だが、訓練された身体表現だけではなく、より日常的な動きや物に関連づけた身体表現をダンスと捉えている。