2023/9/15

ユングラ稽古会シリーズでの土屋光さんの稽古で、自分が普段の生活の中で聞いている音を録音するという課題があったので、それについて記録しておきたい。

私が録音した音は以下の3つ。

・ガラスポットに蛇口から水を入れる時の音

・サーキュレータを「強・首振り」で回しているときに、その背景で鳴る共鳴音のような音

・ラジオ番組の録音配信をyoutubeで聞いているとき、ライブでは流れていた楽曲がyoutubeでは流せないので、その曲がかかっていた時間はそのまま無音になる。その無音の時間。

・ガラスポットに蛇口から水を入れる時の音
夏の間、1リットル入るガラスポットで、水出しの麦茶を毎日作って飲む。蛇口の下にポットを置き、蛇口をひねり勢いよく水を出し、麦茶のパックを放り込み、満杯になる前に水を止める。水を入れている時間は20秒程度だが、大体他の作業をしている。作業しながら横目で水の量を確認しつつ満杯になる手前で止める。そのタイミングを、目だけでなく耳でも測っている。
「シャー」と「ゴー」が混じったような音がポットの中で反響し、水位が上がるにつれてその音程が高くなり、少し細くなっているポットの口近くまで来ると、いかにも”終わり”を感じさせる高い響きになる。
目で水位を確認しながら、耳でも、その音の上り坂の頂点を見極めようとする。
ギリギリのところでキュッと蛇口を閉めると、水と音が止まる。演奏をクライマックスのところで止めた指揮者のような気分にもなる。視覚と聴覚の情報がぴたりと一致する快感がある。

・サーキュレータの背景で鳴る共鳴音のような音
サーキュレータを「首振り」かつ「強」で回すと、サーキュレータの羽やモーター自体の音とは別に、”ブーン”という低い波のような、うねりを伴った共鳴音が鳴る。壁を背景にすると特によく聞こえる。どういう仕組みで鳴っている音なのかわからないが、その音を聞くと落ち着くので、サーキュレータを回している間は、その共鳴音の波のような変化をずっと聞いている。

・ラジオ番組の録音配信をyoutubeで聞いているときの、無音の時間
ラジオ番組をyoutubeの録音配信で聴くことが、しばしばある。インターネットだと著作権に引っかかるためか、ラジオ放送では流される音楽が流れない。
TBSラジオを聴くことが多いのだが、TBSの場合は少なくとも、その無音の時間が編集でカットされることはなく、曲が続いているだけの数分間、平然と無音が続くことが多い。その無音を聞く時間が意外と好きだ。
これからかかる音楽について、割と詳しく説明が入ったりするのだが、曲名とアーティスト名が告げられた瞬間、無音になる。耳は曲を聞く準備をしていたのに、必ずそれは裏切られる。その裏切られが気持ち良い。
実際は、無音を聞いているというよりは、頭の中でその曲を何となく想像しながら、部屋の環境音や自分の呼吸音などを聞いている。聞くことが複層化する感覚。曲の時間が終わりパーソナリティの声が戻ってくると、その音にまた意識を戻す。
人の話を聞いていたのに、ぼんやり他のことを考えていつの間にか話が耳に入って来なくなり、何かのタイミングで我に返る(というか我から現実に返る)時の状態にも、似ている気がする。